家を建てるなら知っておきたい「必要な年収」の目安
マイホームを建てることは、多くの人にとって人生で最も大きな買い物の一つです。しかし、「自分の年収で家を建てることができるのか?」と不安に感じる方も多いでしょう。住宅購入では、単に「借りられる金額」だけでなく、「無理なく返済できる金額」を考えることが重要です。
この記事では、家を建てるために必要な費用の内訳や、年収別にどのくらいの家を購入できるのかを解説します。さらに、住宅ローンの適正額や、無理のない資金計画についても詳しく説明します。
この記事を読めばわかること
- 家を建てるのにかかる費用の内訳
- 年収ごとに購入可能な住宅価格の目安
- 住宅ローンの借入可能額と適正な借入額の違い
- 家を建てるための資金計画と節約のポイント
これからマイホームを考えている方は、ぜひ参考にしてください。
家を建てるために必要な費用の内訳
家を建てるには、単に建物の建築費用だけでなく、さまざまな費用が発生します。総額を把握し、適切な資金計画を立てることが重要です。ここでは、家を建てる際に必要となる主な費用について詳しく解説します。
1. 建築費用(本体工事費)
家の建築に直接かかる費用で、総費用の約70~80%を占めます。一般的に、建築費用の目安は以下のようになります。
建物の種類 | 坪単価の目安(万円) | 30坪の家の建築費用(万円) |
---|---|---|
ローコスト住宅 | 40~60 | 1,200~1,800 |
一般的な注文住宅 | 60~90 | 1,800~2,700 |
高級注文住宅 | 100以上 | 3,000以上 |
坪単価は仕様や設備によって大きく変わります。また、ハウスメーカーや工務店によっても費用が異なるため、複数の会社から見積もりを取ることが重要です。
2. 付帯工事費
建物本体の費用以外に、電気・ガス・水道などのインフラ整備や外構工事などの「付帯工事費」がかかります。これらの費用は、建築費用の約20%前後が目安です。
付帯工事の例
- 地盤改良費(軟弱地盤の場合):50~150万円
- 電気・ガス・水道引込費用:20~80万円
- 外構工事(駐車場・庭・フェンスなど):50~300万円
特に、地盤改良費は土地の状態によって大きく変わるため、事前の調査が重要です。
3. 土地購入費(必要な場合)
注文住宅を建てる場合、土地を持っていない場合は別途購入が必要です。土地価格は地域によって大きく異なります。
土地価格の目安(全国平均・2024年)
- 三大都市圏(東京・大阪・名古屋):3,000~6,000万円
- 地方都市(札幌・仙台・広島・福岡など):1,500~3,500万円
- 地方(郊外や田舎):500~2,000万円
また、土地購入時には仲介手数料や登記費用、固定資産税などもかかります。
4. 諸費用(税金・ローン関連費用など)
家を建てる際には、ローンの手続きや税金などの諸費用が発生します。
主な諸費用
- 住宅ローン関連費(事務手数料・保証料):借入額の2~3%(100万~150万円)
- 登記費用(所有権移転・抵当権設定):30~100万円
- 火災保険・地震保険料:10~50万円
- 税金(不動産取得税・登録免許税など):数十万円
諸費用の合計目安:住宅価格の5~10%程度
特に、住宅ローンを利用する場合は、保証料や手数料が発生するため、契約前にしっかり確認しましょう。
5. 引っ越し・新生活費
新居に引っ越す際には、家具・家電の購入費や引っ越し費用も必要です。
引っ越し・新生活費の目安
- 引っ越し費用:10~30万円
- 家具・家電の購入費:50~200万円
これらの費用もあらかじめ予算に組み込んでおくと、余裕をもって新生活をスタートできます。
年収別にシミュレーション!いくらの家が買える?
家を建てる際に最も気になるのが、「自分の年収でどれくらいの家が建てられるのか?」という点です。ここでは、一般的な住宅ローンの借入額の目安や、年収別に購入可能な住宅価格をシミュレーションしてみます。
1. 住宅ローンの借入額の目安
一般的に、住宅ローンの借入可能額は 「年収の5~7倍」 が目安とされています。ただし、無理なく返済するためには 「年収の5倍以内」 に抑えるのが理想的です。
また、住宅ローン審査では、返済負担率(年収に占めるローン返済額の割合) が重要視されます。金融機関ごとの基準は異なりますが、以下のような目安があります。
年収(税込) | 返済負担率の上限 | 毎月の返済額の上限 | 借入可能額(35年ローン・金利1.5%の場合) |
---|---|---|---|
300万円 | 30% | 7.5万円 | 約2,000万円 |
400万円 | 35% | 11.6万円 | 約3,100万円 |
500万円 | 35% | 14.5万円 | 約3,900万円 |
600万円 | 40% | 20万円 | 約5,500万円 |
700万円 | 40% | 23.3万円 | 約6,500万円 |
※金融機関や金利によって借入可能額は異なります。
ただし、借りられる額と無理なく返済できる額は異なるため、次のシミュレーションで適正な住宅価格を考えていきましょう。
2. 年収別に購入可能な住宅価格のシミュレーション
ここでは、「年収の5倍以内」 の範囲で、無理なく購入できる住宅価格をシミュレーションします。
年収(税込) | 無理のない住宅価格(年収の5倍) | 頭金(10%想定) | 借入額(住宅ローン) | 毎月の返済額(35年・金利1.5%) |
---|---|---|---|---|
300万円 | 1,500万円 | 150万円 | 1,350万円 | 約5万円 |
400万円 | 2,000万円 | 200万円 | 1,800万円 | 約6.5万円 |
500万円 | 2,500万円 | 250万円 | 2,250万円 | 約8万円 |
600万円 | 3,000万円 | 300万円 | 2,700万円 | 約9.5万円 |
700万円 | 3,500万円 | 350万円 | 3,150万円 | 約11万円 |
3. 年収ごとの住宅購入のポイント
- 年収300万円の場合
- 住宅ローンの借入可能額は2,000万円ほどだが、無理なく返済するためには 1,500万円前後の住宅 を目安に。
- 頭金を多めに準備し、ローンの負担を減らすのが重要。
- 中古住宅やコンパクトな住宅を選択肢に入れるのもアリ。
- 年収400万円の場合
- 2,000万円前後の住宅 が無理なく購入できる範囲。
- 住宅ローン控除や補助金を活用すると負担を軽減できる。
- 固定費の見直しを行い、貯蓄を増やすのがポイント。
- 年収500万円の場合
- 2,500万円前後の住宅 が目安。
- 自己資金を増やせば、選べる住宅の幅が広がる。
- 太陽光発電や省エネ住宅を検討し、ランニングコストを抑えるのも有効。
- 年収600万円以上の場合
- 3,000万円以上の住宅 も検討可能。
- 頭金をしっかり準備すれば、金利負担を抑えられる。
- 将来の支出(教育費・老後資金)も考えた計画が重要。
4. 住宅ローンの選び方
家を建てる際、住宅ローン選びも重要なポイントです。以下の点に注意しましょう。
- 固定金利 vs 変動金利
- 固定金利:金利が一定で、返済額の変動がない(フラット35など)。
- 変動金利:金利が低めだが、将来の金利上昇リスクあり。
- 団体信用生命保険(団信)
- 住宅ローン契約時に加入が必須の生命保険。
- 保障内容(がん特約付きなど)を確認し、自分に合ったものを選ぶ。
- 繰り上げ返済の活用
- 余裕があるときに、繰り上げ返済をすることで利息負担を軽減できる。
住宅ローンの借入可能額と適正額の考え方
家を建てる際、多くの人が住宅ローンを利用します。しかし、「借りられる額」と「無理なく返済できる額」は必ずしも一致しません。ここでは、住宅ローンの借入可能額の算出方法や、適正な借入額を判断するためのポイントを解説します。
1. 借入可能額はどう決まる?
金融機関は住宅ローンの審査を行い、「返済負担率」 などの基準に基づいて借入可能額を決定します。
返済負担率とは?
返済負担率(返済比率) とは、年収に対する住宅ローンの年間返済額の割合 を指します。金融機関ごとに基準は異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
年収(税込) | 返済負担率の目安 | 毎月の返済額の上限 | 借入可能額(35年ローン・金利1.5%) |
---|---|---|---|
300万円 | 30% | 7.5万円 | 約2,000万円 |
400万円 | 35% | 11.6万円 | 約3,100万円 |
500万円 | 35% | 14.5万円 | 約3,900万円 |
600万円 | 40% | 20万円 | 約5,500万円 |
700万円 | 40% | 23.3万円 | 約6,500万円 |
この基準を超えると、審査に通らない可能性が高くなります。また、借入額が多すぎると生活に負担がかかるため、適正な借入額を見極めることが重要です。
2. 適正な借入額を決めるポイント
借入可能額は「いくら借りられるか」ですが、適正額は「いくらなら無理なく返済できるか」です。一般的には、以下の基準を目安にすると安心です。
① 返済負担率は20~25%に抑える
金融機関の基準では35~40%まで認められることが多いですが、実際に無理なく返済できるのは年収の20~25%まで とされています。
例えば、年収500万円の場合:
- 返済負担率35%:年間返済額175万円(月14.5万円)→生活費の圧迫リスクが高い
- 返済負担率25%:年間返済額125万円(月10.4万円)→生活にゆとりを持てる
② 貯蓄や教育費を考慮する
子どもの教育費、車の買い替え、老後の貯蓄など、今後のライフプランも考慮する必要があります。以下のような支出も想定しておきましょう。
- 子ども1人あたりの教育費:1,000万円~2,500万円
- 車の買い替え(10年ごと):200万円~400万円
- 老後資金(夫婦2人分):3,000万円~5,000万円
これらを考えると、住宅ローンに家計の余裕を奪われるのは避けたいところです。
③ 頭金の準備をする
頭金をしっかり用意すると、借入額を抑えられ、金利負担も軽減できます。
- 頭金なし(フルローン) → 月々の返済額が増えるが、手元資金が残る
- 頭金10~20%用意 → 借入額を減らし、総返済額を抑えられる
例えば、3,000万円の住宅を購入する場合:
- 頭金なし(フルローン):借入額3,000万円 → 総返済額 約3,900万円
- 頭金300万円(10%):借入額2,700万円 → 総返済額 約3,510万円
頭金を入れるだけで、総返済額を400万円近く抑えられる可能性があります。
④ ボーナス払いを過信しない
住宅ローンでは、ボーナス払いを併用するプランもありますが、ボーナスは不安定な収入源のため、できるだけ 毎月均等払い で計画するのが安全です。
3. 「借りられる額」と「借りてもよい額」の違い
実際の住宅ローンの適正額を、年収別に比較してみます。
年収(税込) | 借入可能額(35年・金利1.5%) | 無理なく返済できる借入額(年収の5倍) |
---|---|---|
300万円 | 約2,000万円 | 1,500万円 |
400万円 | 約3,100万円 | 2,000万円 |
500万円 | 約3,900万円 | 2,500万円 |
600万円 | 約5,500万円 | 3,000万円 |
700万円 | 約6,500万円 | 3,500万円 |
金融機関が貸してくれる金額と、実際に負担なく返せる金額には大きな差があります。「借りられる額」ではなく、「無理のない額」を基準に住宅計画を立てましょう。
4. 適正な住宅ローンを選ぶためのポイント
住宅ローンを選ぶ際は、以下の点を考慮しましょう。
- 固定金利 vs 変動金利
- 固定金利:将来の金利変動リスクなし(例:フラット35)
- 変動金利:金利は低いが、将来的に上昇する可能性あり
- 借入期間は35年が主流
- 返済期間を短くすると総支払額は減るが、毎月の負担が増える
- 35年ローンにして、余裕があるときに繰り上げ返済をするのが賢い方法
- 団体信用生命保険(団信)の内容を確認
- 住宅ローン契約時に加入が必要な生命保険
- がん特約付き など、オプションを選べる場合もある
- 住宅ローン控除や補助金を活用
- 住宅ローン控除(2025年現在):年末のローン残高の0.7%を所得税から控除
- こどもエコすまい支援事業:子育て世帯・若者夫婦世帯向けの補助金(最大100万円)
注:補助金や助成金の制度は、予算の都合や政策の変更により、終了したり内容が変更されたりする場合があります。最新の情報を確認するために、各制度の公式ウェブサイトや窓口にお問い合わせいただくことをお勧めします。
家を建てるための資金計画と節約術
家を建てる際には、住宅ローンの返済だけでなく、頭金・諸費用・将来の維持費 まで考えた資金計画が重要です。ここでは、無理のない資金計画の立て方や、住宅費用を節約する方法を解説します。
1. 家を建てるための資金計画の立て方
① 総予算を決める
家を建てるための総予算は、「住宅価格 + 諸費用 + 頭金」 で決まります。
例えば、3,000万円の住宅を購入する場合の資金計画例:
- 住宅価格:3,000万円
- 諸費用(住宅価格の5~10%):150~300万円
- 頭金(住宅価格の10%):300万円
- 住宅ローン借入額:2,700万円
総予算を決める際は、自己資金(貯金)をどれくらい使うか も重要なポイントです。
② 頭金はいくら用意すべき?
頭金は住宅価格の10~20%が理想 とされています。
- 頭金なし(フルローン) → 資金準備の負担は少ないが、総返済額が増える
- 頭金10%(一般的) → 住宅ローンの金利負担を軽減
- 頭金20%以上 → 金利優遇を受けられる場合があり、総支払額を抑えられる
頭金がない場合でも、低金利のローンを活用すれば負担を減らすことは可能ですが、長期的な返済計画をしっかり立てましょう。
③ 月々の返済額を試算する
住宅ローンの月々の返済額は、借入額や金利によって変わります。
借入額 | 金利1.5%(35年ローン)の場合の月々の返済額 |
---|---|
2,000万円 | 約6万円 |
2,500万円 | 約7.5万円 |
3,000万円 | 約9万円 |
3,500万円 | 約10.5万円 |
毎月の返済額が手取り収入の25%以下 になるように調整するのが理想です。
2. 家を建てる際の節約ポイント
① 住宅ローンを比較して金利負担を抑える
住宅ローンは金融機関によって金利や手数料が異なります。以下のポイントに注目して選びましょう。
- 金利タイプ:固定金利(フラット35)か変動金利か
- 保証料や事務手数料:金融機関ごとに異なる
- 繰り上げ返済手数料:無料の銀行を選ぶと返済しやすい
低金利のローンを選ぶことで、長期的な総支払額を抑えることができます。
② 土地代を抑える
土地代は住宅費用の大きな割合を占めます。以下の方法で費用を抑えることが可能です。
- 郊外の土地を選ぶ:都市部より価格が低い
- 中古の土地を活用する:更地より安く購入できる場合がある
- セットバック(道路後退)などが必要ない土地を選ぶ:余計な造成費を避けられる
③ 補助金や助成金を活用する
新築住宅には、国や自治体の補助金制度を利用できることがあります。
こどもエコすまい支援事業
- 対象:子育て世帯(18歳未満の子どもがいる世帯)または若者夫婦世帯(夫婦のどちらかが39歳以下)
- 補助額:最大100万円
- 条件:ZEH(ゼロエネルギー住宅)基準を満たす住宅の新築
- 公式サイト:国土交通省 こどもエコすまい支援事業
ZEH(ゼロエネルギー住宅)補助金
- 対象:ZEH基準を満たす住宅を新築する人
- 補助額:55万円~100万円(条件により変動)
- 公式サイト:環境省 ZEH支援事業
注:補助金や助成金の制度は、予算の都合や政策の変更により、終了したり内容が変更されたりする場合があります。最新の情報を確認するために、各制度の公式ウェブサイトや窓口にお問い合わせいただくことをお勧めします。
④ 外構・インテリア費用を抑える
家を建てた後にかかる外構工事(駐車場・フェンス・庭)や家具・家電の費用 を抑える方法も検討しましょう。
- 外構工事をシンプルにする(後からDIYで追加も可能)
- 必要最低限の家具・家電から始める(徐々に買い足す)
- リサイクルショップやアウトレットを活用
外構やインテリアを工夫すれば、数十万円単位で節約が可能です。
3. 住宅維持費も考慮する
家を建てた後も、固定資産税やメンテナンス費用がかかります。
- 固定資産税(建物の評価額によるが、年間10~20万円程度)
- 修繕費用の積み立て(10年後に100万円以上のリフォーム費用が発生することも)
- 火災・地震保険(加入必須、年間数万円)
維持費まで含めた長期的な資金計画を立てることで、家計の負担を減らすことができます。
まとめ:無理なく家を建てるために大切なこと
家を建てることは、多くの人にとって人生最大の買い物です。資金計画をしっかり立てることで、無理なく理想の住まいを手に入れることができます。本記事で解説したポイントを振り返りながら、無理のない住宅購入のために大切なことをまとめます。
1. 年収に見合った住宅価格を選ぶ
- 借入可能額 ではなく 無理なく返済できる額 を基準にする
- 年収の 5倍以内の住宅価格 が安心な目安
- 返済負担率は 20~25%以内 に抑える
2. 住宅ローンは慎重に選ぶ
- 固定金利・変動金利の違い を理解し、自分に合ったローンを選ぶ
- 頭金を10~20%用意すると金利負担が軽減
- ボーナス払いは頼りすぎない(安定した返済計画を立てる)
3. 家を建てるための費用を把握する
- 建築費用のほかに、土地代・諸費用・外構工事費 も含めた総予算を考える
- 住宅ローン以外の維持費(固定資産税・メンテナンス費) も忘れずに計画する
4. 補助金や助成金を活用する
- こどもエコすまい支援事業 や ZEH補助金 などを活用して費用を抑える
- 補助金は政策により変動するため、最新情報を公式サイトで確認 する
5. 将来を見据えた資金計画を立てる
- 教育費・車の買い替え・老後資金など、将来の支出も考慮 する
- 住宅ローンの繰り上げ返済をうまく活用し、金利負担を減らす
- 生活費の見直しを行い、家計の負担を最小限に抑える
家を建てるためには、単に「いくら借りられるか」ではなく、「無理なく返済できるか」を重視した計画が必要です。住宅ローンや補助金を上手に活用しながら、将来の支出まで考えた資金計画を立てることで、安心してマイホームを手に入れることができます。
しっかりと計画を立てて、理想の住まいを手に入れましょう!